こんにちは。マサ@カンボジアです。
今日はスタディツアー中に大学生と共に実施した大学進学支援での一コマを。
記事の対象は「スタディツアーで村でどんな体験が出来るのか気になる」という大学生向けです。
支援体験(学生宅訪問)
この時は国際協力NGO CBBが過去5年間に渡って実施している大学進学支援、その支援の一部を学生たちに体験してもらいました。
(注:僕の本業は国際協力NGO CBBの代表です)
ニーズ調査にもそのまま転用できる手法なので、インタビューなんてしないし、って団体でも参考にはなるかと思います。
やったこと:インタビュー体験
このインタビュー、「途上国の人との話し方」という専門書にもある内容なんですが、いかんせん難しい。
質問の仕方を間違えると何も情報が掴めずに最悪撤退になるケースもありますしね。
海外展開してる中小企業の最大の失敗はこのインタビュー手法を知らない故のミスコミュニケーションではないか、と僕は疑っています笑
もちろんコミュニケーションが成功のすべてではないですが、少なくともスタートラインとしては役立つかなと思います。
CBBメソッド
このインタビュー手法を便宜上「CBBメソッド」とでもしておきましょうか。
基本の考え方としては「思い込み」ではなく「事実」を聞き出す手法です。
例えばカンボジア人から「お金がありません」という問題を聞いたとしましょう。
よくある話ですね。
これを「そうですか、いくら必要ですか」としてたら本当の所が分からずに話が終わってしまう、もはやお金がないのが本当かさえ分からない、という状態になります。
そこでCBBメソッドでは「一問一答の質問」を沢山用意します。
設問を分かりやすくするために「お金がないから退学して、働かなければならないと言う大学生」想定にしましょう。
質問のゴールは「お金が本当はいくら必要なのかを明確にすること」です。
この時の質問は以下の通り
・いくら必要なのか
・何に必要なのか
上記はイメージが返ってくるのでメモ程度に。
・先月までどうしていたのか
・先月の収入(or仕送り)はいくらか
・先月の出費はいくらか
ここもまだイメージですね。基本的には先月まで大丈夫で今月にいきなりお金がなくなる、というのも変な話なのでそこを確認していきます。
・食費に1か月でいくら必要か
・飲み物代に1か月でいくら
・家賃(光熱費)に1か月でいくら
・交通費・ガソリン代に1か月でいくら
この辺りで身近な友人に、同じ質問をすると効果的。同じ水準の暮らしをしている人たちと数字がかけ離れていると本人も「おや?」と思うようです。ただプライドを傷つけないようにうまくやりましょう。
ここからより「事実質問」に入っていきます。
・食費は朝昼晩いくら必要
・飲み物代は1日いくら
・その他出費は1日いくら
この辺りで最初の質問や1か月の質問と答えが噛み合わなくなっていきます笑
ホワイトボードなんかに受け答えを書きながらやるといいですね。
さて極めつけの質問です。
ただこれを聞くためにコツがあります。
・朝何時に起きた?
・何を食べた?
・何時に学校に行った?
この質問を繰り返し、24時間の動きを把握しちゃうんです。そしたら何の飯を食ったかくらい覚えていますからね。それがいくらだったのかも聞けるし推測もできます。
止めにこれを聞いたらほぼ終了です。
上記と同じ要領で24時間の動きを把握してそこのお金の流れを把握しましょう。
出費が1日$0.75程度なら×30日=$22.5。ここに家賃光熱費一人当たり$25が追加されて1か月の出費は$47.5くらいかなとなるわけです。
仮に収入がバイトのみで月$40だとしたら、必要額はたったの$7.5ですからね。これなら多少仕事を増やすなどして調整可能です。
すると、お金がないから退学して働かなければならない、という主張とちょっとズレてきますね。
例2:CBBメソッド(家庭状況版)
プロジェクトによってはここまで把握したら終わるのですが、目先のお金のための退学を阻止するためには、更に深堀していきます。
両親や兄弟関係で誰かが働けなくなったり病気になって大金が必要な場合もありますからね。
そんな時はまずご両親の状況を把握しましょう。
・父親の仕事は?月収は?(場合によっては1日の稼ぎ)
・母親の仕事は?月収は?
・兄弟は何人?
・それぞれ何歳?何をしてる?どこに住んでる?
・兄弟のそれぞれ月収は?
さてここまでは大雑把な事実ですね。
ここからより「事実把握」の質問になっていきます。
・水田の広さ(ヘクタールor長さ×長さ)
・1年の収穫量
・農業からの年収
田舎の人の9割は農家なのでこの質問は非常に大切です。
一見全部同じ答えなのですが、そこがミソですね。
・家の建築資材(木、コンクリ、トタン、築年数など)
・他の土地保有の有無
・家畜(数と種類、牛、豚、鶏、アヒル)
・保有バイク(数と種類、年式)
・借金額(どこからいくら。毎月の返済額いくら)
・進路希望(将来のやりたいこと)
ここまで聞けば家庭状況の把握はばっちしです。
家の建築資材
一番上からコンクリート、コンクリート+木材、木材高床、トタン高床、トタン、藁といった具合で貧困度と関係していきます。
素材もですね。ペイント具合や板の整い具合も関係あります。
また床の高さ。これが一番分かりやすいかな。
高床を高くするには結構お金かかるんですよね。
基礎も穴を1メートル弱掘って、石、小石、セメントで固めて、床を高くするだけで+40万円くらいいきますよ。
逆に大きな家でも余りお金持ちかに関係ないのが古い家。築20年以上の木材の家ですね。
当時は木がすごく安かったそうで、確かに大きな古い家に住んでいる家族は「昔は金持ちだったんだけど…」ってとこが多いですね。
他の土地所有の有無
これは自宅と水田以外のことを指しているのですが、土地は馬鹿になりませんからね。人に貸していたり、近々売却予定だったり、寝かせていたり。
またカシューナッツや青マンゴー、サトウキビの畑、なんてこともありますからね。
カシューナッツは儲かるそうです。
家畜の数と種類
こちらも侮ることなかれ。
鶏、アヒルは成長したら1匹$5ほど。大きさによってキロで判断されます。
でも3か月で大きくなるんだから儲けものですよね。
仮に毎月$5収入が増えるだけでも結構な差です。
豚さんは半年から1年ってとこでしょうか。
彼らはちょっといくらか覚えてないのですが$50~$100とかだったような。
牛さんは最強です。
購入時が$50~$100くらいかな。もう何年も育てて大きくします。
そしたらなんと$1000!
バイク買えてしまいます。
ただ牧草を食べに行かせるのに丸1日かかったり、干し草用意したり、中々大変ですね。
保有バイク(数、車種、年式)
自転車は仮に何台あっても安いので余り勘定はしません。
ただバイクは大きく変わるポイント。
仮に一番人気の新車HONDA DREAM2018なんて買おうものなら$1800。
平均月収$101なのにどうやって買うんだろうって感じです。
2018年時点でオートマで人気なのはHONDA ZOOMERですね。
2016年くらいまではスクーピー一強でしたが、少し崩れました。
この辺りのバイクが年式によりますが$1500以上します。
150CC以上の中型大型バイクは農村では基本走ってないので例外ですが、だいたい$2500ほど。
仮に上記のようなバイクの年式の新しいものを持っていたら何かしら別の収入源があるというわけです。
親戚がアメリカにいて買ってくれた、なんて事例も多いですね。
こういう家庭は大学進学なんかだと海外にいる親戚が学費はどうにかしてることが多いので対象外になります。
カンボジアは1975~1979年のポルポト前後に大量の難民がアメリカ、オーストラリア、日本、韓国、フランスなんかに渡っていますので、納得と言えば納得です。
また伝統的にタイやプノンペンへの出稼ぎも多く、最近は韓国への出稼ぎが主流。
そうなると長男一人が外国に出稼ぎに行っているだけでもその家庭はもう相対的貧困層ではない可能性も高くなりますね。
借金額(借金場所、返済額、返済頻度)
こちらだいたい$500~$2000程度の借金が王道です。
たまに借金がゼロの家があるのですが、こういった家はお母さんがすごく優秀でやりくり上手だったりします。
大切なのは借金をどこから借りてるのか、かつ毎月の返済はいくらか、ですね。
厄介なのは銀行から借りている時ですね。
この場合は毎月の返済額を毎回確認しています。
逆に親戚や村の人から借りてる場合は返済期限が適当だったりするので額が相当大きくない限りはOK。
進路希望(将来のやりたいこと)
ここの確認大切ですね。
他の項目は家庭状況の確認なのですが、隠れた重要ポイントはここかもしれません。
項目としては
・好きな科目
・大学で勉強したいこと
・先生になりたいか(カンボジアは先生が一番人気)
・先生試験を受けるか
・他の大学、どこを受けるか
・将来やりたいこと
・(親に)子どもに将来何になってもらいたいか
ポイント1
ポイントは先生試験を受けるか否か。
ここで正確なやり取りが出来ないと奨学金を騙し取られる形になり兼ねないので予防線ですね。
試験は何日?なんて聞くとありかもしれません。
また用もなくプノンペンにいたり、試験の日だけ村に帰る子もいるので、仮に奨学金支援の場合は神経を使う点ですね。
大金なので皆キープしておきたいんでしょう。
ポイント2
また地味なポイントになるのが、親の志望。
日本と似ていますが、カンボジアも親の希望がかなり強く反映されます。
日本だと空気感的に醸し出してきますが、カンボジアはこの辺りは直ですね。
例3:CBBメソッド(自転車支援版)
うちは「学校が遠くて行けない子ども」に自転車を提供しているのですが、ここでもどういった子を支援対象者にするのか、支援者選定があるわけですね。
ここでもCBBメソッドが大活躍です。
ちなみにCBBメソッド言ってますが、この方法の基礎は今は無き老舗日系NGO ASACに教えて頂きました。
さて子ども達向けのキーは、もちろん支援対象の設定次第ではあるんですが、以下の要領です。
目的:貧困学生対象なら→CBBメソッド2
目的:成績優秀者対象なら→CBBメソッド2+成績+以下の質問ですね。
目的:中学までの距離が遠い子対象なら→地図で地域確認後、CBBメソッド2+質問。
成績優秀者確認の場合
・朝何時に起きるか、1日の行動確認(これで1日の勉強時間を把握)
他は本質からはズレますが、確認事項としては
・好きな科目、嫌いな科目
・将来やりたいこと(ここも深堀しましょう)
将来やりたいことはカンボジアでの子どもたちの答えは「先生、医者、ナース」に集約されます。
これは他の職業の人が身近にいないこともそうですが、まだ小学生ですので、まぁ。
距離の遠さ確認の場合
・小学校までの距離、徒歩時間、チャリ時間
・中学校までの距離、徒歩時間、チャリ時間
・高校までの距離、徒歩時間、チャリ時間
これ、実は求めてる答えは「どれくらい遠いのか」一つだけなのですが、把握してなかったりするんですよね。
そのためこの距離、徒歩時間、チャリ時間のうち2つを組み合わせた数字が正解、なんてケースが多いですね。
ただ距離が遠くてもお金に余裕のある家はもちろんいくらでもあるので、こういう場合はCBBメソッド2の家計状況がキーになったりします。
実践
これを実践するわけですね。
実際に支援候補学生の自宅にお邪魔してインタビューをします。
しかしこれが中々難しかったりするんですね。
臨機応変に対応する必要もあるので、一朝一夕では厳しいですが、今後途上国の方とちょっと仕事をしたり、プロジェクトをする時に役に立つかなと思います。
あらゆるコミュニケーションの基礎として使えますからね。
スキルの測られにくいNGO業界ですが、このインタビュースキルは差別化ポイントですよ。
インタビューを通して「現地のリアル」を知るキッカケにもなります。
そこからニーズが見えて、次の支援に繋がっていく、なんてことも実際にあったりします。
そう思うと、たかがインタビュー、されどインタビューですね。
まとめ
こんな風にインタビューを進め、後に大学進学支援、自転車の支援等にそれぞれ進めていくイメージですね。
特に大学進学支援はその後4年間の人財育成や雇用創出プロジェクトに繋がっていくので、生徒の身元確認は大切だったりします。
先日ミャンマー新規開拓に行った際も、やはりこのスキルが無意識に役に立ったので、海外でプロジェクトを進めるにはオススメです。
次回のスタディツアー、2019年2月にやりますので、気になる方はTwitterまで是非!
それでは皆さん、よい1日を!